土曜日の夜、自分が住んでいるワンルームマンションに、突然男性が訪問してきた。
ドアを開けると、その男性は、
「現在キャンペーンで、布団の無料クリーニングを行っています」「いまなら特別に布団の無料点検も受けられます」「お使いの布団を見せて下さい」
などと言いながら、強引に部屋に入ってきた。 |
仕方なく自分の使っている布団を見せると、担当者が掃除機のような機具を取り出し、布団を吸引しはじめた。
吸引が終わると、ほこりの取れた様子を自分に見せ、
「敷布団の中に、ダニが沢山わいていますね」
「布団で寝ていて、時々かゆくならないですか?」
「ほこりをこれで見て下さい。拡大してみると、ほら、ダニが沢山いるのが判りますよね。ダニは湿気が大好きなんです」
「湿気のこもった布団は、ダニが増えやすい環境です」
「布団を叩くと、ほら、こんなにほこりが出ます」「このほこりは、ダニの死骸やダニの糞、カビなんです」
「ここまで酷いと、クリーニングしても手遅れです」
「このまま、この布団を使い続けていると、肺炎やアレルギー性肺炎になってしまいます」
「この布団はもう駄目ですから、新しい寝具に買い替えないと」
「今なら特別キャンペーンで、古い寝具を下取りに出すことで、下取り値引きが利用できます。下取り値引きで、10万円の割り引きが利用できます」
「特別にシーツと枕カバーを無料でサービスさせていただきます」
などと、布団を新しい物に買い替えるよう、勧誘が始まった。 |
最初のうちは契約を断っていたが、そのうち、担当者の上司と名乗る男性が、寝具一式を持参して勧誘に合流した。
上司の人が、持ってきた新品の寝具一式の梱包を解き、頼んでもいないのに勝手に部屋に敷き始めた。
「特別に、梱包を解いて敷いてみました」
「せっかくですから、横になって試してみて下さい」
「横になってみれば、この寝具の良さが判ります」
などと言いながら、寝具を試用するよう、半ば強引に促してきた。 |
その後も、狭いワンルームマンションの室内で、2対1の状態での勧誘が続いた。
説明が始まってから3時間近く経ち、担当者やその上司の態度にもイラついた感じがはっきりと出てきた。
契約をしないと、この場が収まらないような、重苦しい雰囲気になり、これ以上断るのも怖くなったため、仕方なく寝具を購入することにした。
羽毛掛布団、羊毛敷布団、汗取りパット、枕とカバーリングセットで、合計50万円近い契約となった。
今まで使っていた布団は、下取りとして担当者が持ち帰り、新しい布団はそのまま受け取り、今夜から使うこととなった。 |
担当者が帰ってから、落ち着いてよく考えると、ダニやカビの話しが本当だったのか、疑問を感じる。
無料クリーニング、無料点検といいながら、結局新しい寝具を購入することになった点についても、最初から販売が目的だったのではないかと、疑問を感じる。
寝具を買い替えるにしても、いまどき数万円も出せばそこそこの寝具が買える。わざわざ50万円も出す必要はない。
ただ、クーリングオフを申し出ると、また自宅に複数の担当者が押しかけてきそうで不安を感じる。
既に商品の布団を使用しているため、無事にクーリングオフできるかどうかも気になる。 |