よくある勧誘の流れ その1 |
ある日、自分の住むマンションに男性が訪問してきた。
「不動産についての意識調査を行っています。住宅購入についてのアンケートにご協力下さい」
「住宅購入についてのアドバイスや、住宅購入の質問にお答えしております。住宅購入のモデルプランについて、図面を広げて詳しく説明させていただきます」
とのことだった。
住宅購入には興味があったので、とりあえず部屋に入ってもらった。 |
男性担当者が部屋に入ると、いくつかアンケートを行った後に、テーブルに書類を広げ、住宅購入についての説明を始めた。
住宅購入の一般的な知識の説明や、
賃貸住宅に住み続けた場合の家賃と、住宅ローンを組んだ場合の支払金額の比較、住宅ローンの仕組みや、住宅に関する税金のことなど、いろいろ説明をしてくれた。 |
そのうち、担当者が、
「住宅ローンが組めるかどうか、検討してみましょう」
などと言い始め、自分の勤務先や勤続年数、年収や貯金、借り入れの有無などについて、質問が始まった。
「いま住んでいるマンションの家賃はいくらですか?」
「・・家賃は月8万円ですか」「ちょっと計算してみましょう。8万円の家賃を、35年払い続けたと仮定して」
「35年分の家賃に、2年ごとに発生する更新料も加えると、支払い総額はおよそ3500万円になります」
「賃貸だと、この3500万円は払っただけで終わりです。払い捨てで、後には何の財産も残りません」
「でも、普通に考えて、3500万円も出せば、2LDKの新築マンションが買えますよね?たとえば、住宅ローンを組んで2LDKのマンションを購入したとしても、月々のローン支払額は、今の家賃と同程度に抑えることが出来るんです」
「それなら、家賃として8万円を払い続けるよりも、住宅ローンとして8万円払った方が、財産も残りますし、お徳ですよね?」
「このまま一生、賃貸マンションに住み続けるつもりはないですよね?」
などと、担当者から聞かれた。 |
自分としても、将来的にはマイホームを購入したいと考えていたので、「いつになるかは判りませんが、いずれ住宅購入も考えています」と答えたところ、
担当者は、
「もちろんそうですよね」
「マイホームは、人生設計の基本ですから、いろいろ検討してみましょう」
「マイホームを購入することで、人生の基盤が固まりますし、将来結婚したときにも、マイホームがあれば、幸せな家庭を築くことが出来ます」
「マイホームを購入することで、仕事の励みにもなるはずです」
「マイホームの購入は大切なことですから、日を改めて、いろいろと検討してみましょう。参考になりそうな物件の資料もお持ちします」
「次回、いつお会いできますか?」
などと言ってきた。
次の土曜日に、担当者にもう一度自宅に来てもらって、いろいろと教えてもらうことになった。 |
よくある勧誘の流れ その2 |
土曜日になり、担当者が自宅を訪問してきた。
住宅を購入した場合のローン返済について、具体的なシミュレーションをしながら説明を受けた。
資金計画や、住宅ローンの仕組み、住宅ローン控除などの税金の仕組みについて、いくつか説明を受けた後、
担当者が「住宅ローン返済のモデルプランを作ってみましょう」と言い出した。
「源泉徴収票か給与明細を見せて下さい。簡単な家計簿をつけてみますから、預金通帳を見せて下さい」
などと言いながら、所得や貯蓄状況、家賃や生活費などの出費をリストアップして、簡単な家計簿を作りはじめた。
そして、住宅ローンを組んだ場合の収支について、細かな計算を始めた。
「この交際費や趣味のお金は、削ることが出来ますね」
「住宅ローンの審査が通りやすくなるよう、クレジットの借り入れは、繰り上げ返済してしまいましょう」
「頭金が少なくても、工夫すればなんとかなります」
「35年ローンにすれば、月々の住宅ローン返済額は、9万円に抑えることができます。9万円の住宅ローンなら、いまの家賃と同程度ですから、問題なく払えますよね?」
などと、住宅ローンを組んだ場合を想定した、返済プランを作ってくれた。 |
続けて、マンションを購入する際に必要な手続きや、契約の流れについて、説明が始まった。
最初のうちは、「一般的なマンション購入の流れを教えてくれているのだろう」と思って軽く聞き流していたが、担当者が、「頭金はいくらぐらい用意できそうか」「印鑑登録はしているか」などと、具体的な購入手続きの話しを始めた。
いつのまにか、自分がマンションを購入する前提で、話しを進めていることに気が付いた。 |
自分には購入の意思は無かったので、驚いて、
「いや、まだマンションを買うつもりはありません。将来マンションを買う場合の話しとして、試しにプランを立ててもらっただけで、今すぐ買うつもりはありません」
と断ろうとしたところ、なぜか担当者が怒り出した。
「昨日、住宅購入を考えていると言いましたよね?さっきも、この支払プランなら、ローンは払えると言ったばかりですよね?」
「住宅購入を真剣に考えていると言うから、仕事として来ているんです。こちらも遊びでやってるんじゃないです。ふざけ半分で人を呼びつけたんですか?」
などと、自分の態度を非難し始めた。 |
なんとか断ろうと、「すぐには決められない」「親に相談してから決めたい」と口にしたところ、
「あなたは一体いま何歳なんですか?子供じゃないんですよ?自分のことは自分で決めないと」
「そんな甘えた考え方をしているから、いつまで経ってもこんな賃貸暮らしなんです」
「自分に甘えて、現実から逃げている。もっと自分自身と向き合わないと」
「甘えた自分と決別する意味でも、あなたはマイホームを購入して、自立心を養わないといけないんです」
「さっきも説明したでしょう」
「このまま、この狭いワンルームマンションの家賃を払い続けるのは、お金をどぶに捨てるようなものです」
「同じ金額で、2LDKのマンションを買うことが出来るんですよ?」
「なら、買った方がいいに決まっているじゃないですか。なんでそんな簡単なことが解らないんですか?」
「あなたが将来結婚するとして、奥さんと、このワンルームマンションで暮らすんですか?ちがいますよね?」
「それなら、将来のことも考えて、この2LDKのマンションを買わないと」
「もし今すぐ自分で住む予定が無いなら、逆に好都合です。すぐに住む予定が無いなら、賃貸に出せばいい」
「新築の2LDKなら、賃貸に出せば、少なくとも家賃13万円で借り手が付くでしょうから、家賃収入でローンを払えば、むしろ、差額でブラスになるんですよ」
「将来マイホームが必要になったら、そのときは自分で住めばいいんです」
「こんな立地条件の良い物件は、そうは出ません。この機会に決めましょう」
「こういうことは、巡り会わせや、縁というものがあります。良いことは早い方がいい」
「このまま、この狭いワンルームに住み続けるつもりなんですか?このまま家賃をどぶに捨て続けるんですか?」
「これは、あなたの将来のために言っているんです。あなたは本当に損をしてるんです。なぜそれが解らないんですか」
などと、説教をされてしまった。
「契約しないのは人としておかしい」「この機会にしっかり自立するべきだ」「現実から逃げる癖を直さないと」
といった内容で、なぜか延々と説教が続いた。 |
そのうち、担当者が
「とにかく、一度物件を見てみましょう。物件を見れば気に入るはずです」
「では、こうしましょう。物件を直接見てもらって、それでも、どうしても気に入らないのであれば、もう一度最初から検討しましょう」
「とにかく、物件は押さえておきますから、この話しの続きは、物件を見ながらにしましょう」
「次お会いできるのはいつですか?」
などと言われ、数日後に会う約束をさせられた。 |
よくある勧誘の流れ その3 |
数日後、約束の時間に担当者が車で迎えに来た。
「先日の物件ですが、他のお客様からも何件か購入の申し込みがあったんですよ」
「でも、「購入する方は既に決まっています」と伝えて、断っておきました」
「先日約束しましたからね。特別に押さえておきましたよ」
などと話をしながら、物件に連れて行かれた。 |
目的のマンションに到着し、新築マンションの一室に案内された。
物件は広くて綺麗だったので、悪い印象は無かったが、まだマイホームを購入するつもりはなかったので、担当者の説明を聞きつつも、どうやって断ろうか、そればかり考えていた。
物件の内見を終えると、そのまま不動産会社の営業所に移動することとなった。 |
営業所に案内されると、再び契約の話しが始まった。
「希望通りの物件だったでしょう」
「他のお客様からも、数件、購入申し込みが来ていたのですが、○○さんが購入されるので、申し込みは断っておきました。こんなに良い物件を押さえることが出来て、本当にラッキーでしたね」
「それでは早速、契約手続きに入りましょう」 などと担当者が言い始めた。
まだ契約すると言ってもいないのに、契約することが前提で、契約手続が始まってしまった。 |
あわてて契約を断ろうと、
「いや、やはりまだマンションを買うつもりはありません。今日は契約をお断りするつもりで来たんです」
と告げたところ、またしても担当者が怒り出した。
「最初から断るつもりで、案内をさせたのか。人が一生懸命説明していたときに、内心馬鹿にしながら聞いてたのか?」
「あなたが購入すると言ったから、他のお客様からの購入申し込みを断ったんですよ?」
「他の方からの申し込みを断ったことで、当社には損害が発生しているんです。どうやって責任を取るつもりなんですか?損害賠償を請求してもいいんですよ?」
「そんな甘えた考えだから、あなたは駄目なんです」
「社会人なら、自分の言動に責任を持たないと。社会人失格ですよ」
などと強い口調で非難されてしまった。 |
なんとか断ろうと、「住宅ローンを払っていく自信がない」「頭金が用意できない」「親と相談したい」と弁解したものの、
担当者から、
「それなら、今からご両親を交えて話しをしましょう。実家はどちらですか?今から一緒に行きましょう。何時間かかっても、絶対に同意させてみせます」
「頭金の心配は必要ありません。こちらでいろいろ工夫します。いま頭金が用意できなくても大丈夫です。いざとなったら私が個人的に貸してもいい」
「住宅ローンといっても、今払っている家賃と同じ程度の額なのですから、払えないはずはありません」
「マイホームはまだ早い、というのは甘えです。自分から逃げているだけです。もっと自立しないと」
「前にも言いましたが、まだマイホームは必要ない、まだ住む予定が無いというなら、それはむしろ好都合です。将来必要になるときまで、賃貸に出しておけばいいんです」
「新築のうちは賃料も高く設定できますから、しばらくは賃貸に出して、家賃収入でローンを払っていけばいいんですよ」
「他人の払ってくれる家賃を利用して、マイホームを手に入れることが出来るんです。すぐに住む予定が無いなら、むしろ好都合です」
「ローンの不安も、問題ありません。もしローンの支払いが苦しくなった場合は、賃貸に出せばいいんです」
「家賃収入が入れば、月々のローンを払ってもお釣りがきますから、その差額を利用して安い家に住めばいい」
「それではこうしましょう。住宅ローンに通るかどうか、試しに銀行で審査にかけてみましょう。もしローンの審査に通らなかったら、その時は、仕方ありません」
「今日のところは、審査を受けるために必要な書類を書いて下さい。ローンの審査に通ったら、そのとき初めて、正式な契約となりますので、安心して下さい」
「もし不安になったら、いつでも相談して下さい」
「本当は手付金として50万円必要なのですが、今日のところは10万円だけ入れてください。残りの手付金は、後日で大丈夫です」
などと説得を受けてしまった。 |
不動産会社の営業所の中で、担当者と、その上司から、契約書へのサインを迫られ、とても断れる状況ではなかった。仕方なく、幾つかの書類にサインをしてしまった。
書類にサインをしたことで、ようやく帰れることになったが、サインをした書類については、
「この書類は、銀行で審査を受けるために必要な書類なので、こちらで預かっておきます」
と言われ、本人控えは渡してもらえなかった。 |
よくある勧誘の流れ その4 |
数日後、担当者から連絡があり、住宅ローンの審査に通った、とのことだった。
もう一度担当者に 「やはり契約をやめたい」「キャンセルしたい」 などと申し出たが、担当者は「もう解約は出来ない」と言うばかりで、キャンセルには応じてもらえなかった。 |
その日の夜、担当者が自宅マンションにやってきた。
直接会いたくなかったので、訪問は断り、しばらく無視していたが、1時間経っても帰らない。しつこくチャイムを鳴らし続けた。
そのうち、オートロックをすり抜けたらしく、自分の部屋の玄関のドアを蹴り始めた。耐え切れずにドアを開けたところ、担当者が部屋に入ってきて、ものすごい剣幕で怒り出した。
「その態度は何だ。人を馬鹿にしているのか。あなたの将来を思って、色々と面倒を見てあげているのに、その態度は人としておかしいだろう」
「優柔不断で、大事な決断ができないから、いつまでたっても駄目なんだ」
などと威圧されてしまった。 |
「物件は既にあなためために確保してあります。関係先にも動いてもらっています。もう契約は動き出しているんです」
「銀行からもローンの内定が出ていますから、今さら解約するとなると、当社の信用問題となります」
「どうしても契約をやめると言うなら、違約金を払ってもらいます」
「違約金は物件価格3500万円の20%ですから、700万円を現金で払ってもらう必要があります」
「それでもいいんですか?」
などど、担当者から違約金や損害賠償の話しを持ち出されてしまい、これ以上、解約をしたいとは言えなくなってしまった。 |
その後も何度か担当者が自宅を訪れ、源泉徴収票や住民票、印鑑登録カードを渡してしまった。
銀行のローン面接の予定日も決められ、ますます断り難い状況になってしまった。 |
なんとか契約を断りたいが、自分で断ろうとしても、すぐに担当者が自宅に押しかけてくる。どのように対処すればよいのか判らない。 |