海外先物取引のクーリングオフ  海外先物 悪質勧誘の手口  海外先物 規制の経緯  禁止行為
海外先物取引規制に至る過去の経緯
海外先物取引は、昭和50年代、悪質な業者の横行により、大きな社会問題となった経緯があります。甚大な消費者被害を踏まえ、昭和57年、海外先物取引規制法が制定されることとなりました。

海外先物取引が規制されるに至った昭和50年代の経緯について、
参考となる国会議事録がありますので紹介しておきます。

これは、昭和57年4月27日(火曜日)、第96回国会 衆議院-商工委員会において、当時横行していた金などの私設市場、ブラック市場、あるいは香港市場での海外先物取引の問題点についての議論と、これら問題点を踏まえ、海外先物取引規制法を早急に制定すべくなされた議論です。

なお、海外先物取引規制法が成立したのは、この後、昭和57年7月16日になってからです。
国会議事録  第096回国会 衆議院 商工委員会 第14号
          昭和五十七年四月二十七日(火曜日)
上記より抜粋

○上坂委員 業者を全然つかんでないで、その業者が書類も何にもなしにとにかく勧誘をやってお客を引き込んで、損害を与えたまま逃げていってしまうというのが、いままでの状況を見ると、実際問題として実態なんです。
 たとえば、池袋のサンシャインというところの−−階かなんかには、このくらいの部屋があって、その部屋に百ぐらいの机が置いてあるわけです。そこに、恐らくアルバイトだと思うのですが、一人ずつ女の人がいるわけです。それが無差別にひっきりなしに電話をかけているわけです。そしてその中で多少とも引っかかって話を聞いてみたいという者があれば、そこへどこから行くのか知らないけれども勧誘員が行くのです。そしてそこで話を聞いてもらえればもう構わないのです。翌日は建て玉しましたとやってしまうのです。それだけのお金を払いなさい、こうなるから、やらなければ大変なけんまくでおどかされるのです。あるいはそこへ勧誘に行った勧誘員というのは、ひどいのになると七時間ぐらい粘るのです。粘られた方はとうとうしびれを切らして、そしてではやってください、こうなっちゃうのです。そう言ったら、次の日はもうすでに取引は全部開始されている、こういう形なんです。そして決まってしまって、損害を与えて、三カ月後にはもう別なところへ行っちゃって、別なものに移っているというのが実態なんです。だから、この法律は結局は被害が起きてからでないと役に立ってこないわけです。そして被害が起きて問題が起きたときに、それでは役に立つかというと、それすら保証ができないという法律ではないかと私は思うのです。
 ところで、先ほど商品の指定をどうするのかと言ったら、三つ挙げましたね。大豆と金と砂糖ですね。これらはみんな日本の商品取引所で扱っている品物、そうすると、何で日本の一般の人たちが海外のそういうのに打を出す必要があるのか。勧誘されなければ絶対そんなところへ行くはずがない。自分でやりたければ日本の取引所でやればいい。それは勧誘があるから手を出してしまうということになる。当業者の方が香港の取引所に委託をして、そして取引をするということについては、これは当然当業者はやるだろうと思うのです。だけれども、一般の消費者といいますか一般大衆が、日本で現実に取引所があって、そこに扱われている商品についてわざわざこれをみずから手を出すということは考えられないことなんですね。そうなりますと、これはまさに悪質な勧誘によってしか商品取引に手を出すことはないと私は思うのです。そういうことになれば、何も被害を待ってから取り締まるなんということじゃなくて、最初からそういうことはやらせないというふうに持っていかなければ役に立たないじゃないですか、法律なんか幾らつくったって。結局通産省の行政として被害者が出るまで待っている。だから日本の政治というのは、どうも事故が起きなければ絶対やらないのだから。たとえばため池がある。ため池に子供が落っこって死ぬと、その付近にずっと塀をめぐらしたりさくをめぐらしたりする、人間がぶつかってはね飛ばされると初めて踏切をつくる、こういうやり方、発想がこれと全く同じだ。これじゃ国民は全く浮かばれないのですね。これは経済犯罪だと私は思うのですよ。そういう犯罪を助長するような形で法律をつくったのではだめだと思うんだ。だから、行為規制法だ行為規制法だとさっきから言うのだけれども、海外でむずかしいむずかしいって何がむずかしいのですか。貿易摩擦なんというのは、あれほどむずかしい問題だって、いや輸入はしませんよ、しませんよとがんばっているじゃないですか。それと同じことで、国内の国民を保護することだったらばできるじゃないですか。しかも犯罪を防止するということなんだから。品物が入ってくることを防いで、自由経済に多少のいろいろな問題が生ずるというような問題じゃないんだ、もっとひどいはずなんだ。何でそれができないのですか。答弁を願います。
*ちなみに、上記は昭和57年の国会議事録です。

この後、海外先物取引規制法が成立し、その後、預託法も成立して現物まがい商法が規制されるに至ったため、深刻な社会問題となっていたこの種取引の被害件数は、ようやく減少傾向を見せることになりました。しかし、当時も現在も、問題の本質はほとんど変化していないように感じられます。

同じく上記より抜粋

○北側委員 (抜粋)
 それでは、法案の中身に入ってまいります。法案の目的は先物取引の委託者保護が趣旨であります。そのため、海外商品市場における先物取引の受託等を公正にして、先物取引の委託者が受ける損害の防止を図る、このようになっておるわけです。その先物取引についての定義、これが第二条に規定されております。現在まで被害が数多く発生している金の海外商品市場を舞台にした金の現物取引まがい商法というのがあるわけです。たとえば具体的な事例を紹介しますと、株式会社N金属というのがあります。これは本社が大阪にあり、支社、支店が東京、福岡、千葉、横浜、京都、姫路にあるわけです。どういう手口でやってくるかといいますと、まず女性が電話をしてくる。女性が電話してくるというのは、大体どこの業者も同じ手口らしいのです。電話の内容は、金を買いませんか、金は絶対的価値があり、インフレに強く目減りしない、また税金がかからない、いまが底値で買いどきだ、これから銀行、証券会社でも金を販売するようになれば、価格が急騰する、一年間で一・五倍になります、話だけでもどうでしょうかと、こうくるらしいのですね。もしここで興味を示すと、これはもう被害者になってしまう。興味はないと断りますと、たとえば神奈川県の主婦、これも実例です。仮名でAさんとしておきますが、電話で断ったにもかかわらず、セールスマンが押しかけてきて、奥さん、これはめったにないチャンスですよ、テレビ見たでしょう、いま金は売れているのです、いま買って二週間後に売れば、百万円が手数料を引いて百五十万円になりますよと言って、印刷された利益表を見せるらしいのです。金は会社が倉庫に入れておきます、短期間ですから御主人に話すこともないでしょう、御主人をびっくりさせてあげたらどうですか、こういうことを言うらしいのです。Aさんはこの話を聞いて、非常にうま過ぎる話だなと初めは思っておった。本当は三百万円なければ取引できないが、百万円でもいいからと言われて、そのまま、相手の話術のうまさと言いましょうか、ふとその気になって書類にサインをしたというのです。その書類は五枚ほどあったけれども、内容は相手の言うままに読まなかった、またなかなか読ませるような空気ではなかったというのです。その契約書は小さい字で書いてあって、内容は客にとってきわめて不利な内容になっておる。まず金を買った市場は香港の現物市場である、そして金を売買したことに同意し、またAさんは自分が支払った分の金を買ったと思っているが、実は総代金はその約四倍、四百万円の取引になっておるというのです。しかも、会社はいつでも好きなときにAさんが支払った百万円の中から倉庫料、運賃、保険料等を取ってよいことになっているというのです。二週間後に買っておいたはずの金を売ったときには、これらの料金や手数料がごそっと取られるというのですね。結局Aさんが支払った百万円はほぼそれで消えてしまうというのです。このように、私らが見ますと、なるほどかかる人も悪いでしょう。悪いですが、やはり相手は商売人ですから、片方は主婦です、やっぱり乗っていくということも考えられると思うのです。全く僕らが考えますと、詐欺ではないかという手口なんです。しかも、それが主婦とか退職金を持った人たち。これはもう統計でも出ているとおりです。実態はこのような実態なんです。この問題については、通産大臣ももう御承知と思いますが、これについて、通産大臣、どのようにお考えでしょうか。
上記は、後に豊田商事事件などで有名となった、金の現物まがい商法について、当時の勧誘例に触れた内容です。

なぜ、当時、上記のような無茶苦茶な取引が可能だったかといえば、
行政の監視の目の届く国内商品取引所を通さずに、私設の商品取引市場を開き、そこで商品取引をした体裁を整えたり(ブラック市場)

あるいは、実際には取引をしなかったり、取引市場に顧客の注文を取り次がず、取引をした体裁を装って、顧客からの預かり金を自己の手元において管理し費消したり(のみ行為)

あるいは、日本の行政機関の監視が届きにくい香港などの海外先物取引市場で、自由に価格操作を行なって、顧客に故意に損失を与え、自己の利益確保を図るなど、(向い玉・無意味な反復取引・客殺し商法)

法規制の手薄なことをいいことに、顧客からの預かり金を、取引損失名目や、売買手数料名目で控除して自己の利益を図る、いわゆる客殺し商法が展開されていました。
その後、海外先物取引規制法が制定され、クーリングオフ類似制度(14日間の取引熟慮期間)や、書面交付義務、禁止行為などの規制がかけられることとなり、業者数は減少し、被害数も減少するに至りました。

しかし、海外先物取引業者はいまだ「許可制」「認可制」ではなく、開業規制は特にありません。

本法制定当時に、通産省担当官が「腐った盲腸を切除するような、最低限のものでしかない」と述べたことからもよくわかるように、規制は今もなお最低限のものにとどまっているのが現状です。

悪質な業者によるトラブルは、今後も絶えることはないでしょう。


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